なぜナオミが売却済の土地を売ることができたのか?(ルツ記4章3節)

質問

ルツ記 4:3 口語訳
ボアズは親戚の人に言った、「モアブの地から帰ってきたナオミは、われわれの親族エリメレクの地所を売ろうとしています。

エリメレクの土地の使用権は、エリメレク家がモアブに向かう前に第三者に売却済なのは明らかです。なぜナオミはそれを再び売ることができたのか?

予備知識

ルツ記1〜4章

ルツ記は全部で4章あります。つまり全部読み通した前提の話です。もしまだ読まれていないなら下記のリンクでお読みください。短いのでさくっと読めますよ。‭‭

‬‬ルツ記‬ ‭1章 口語訳‬‬

「レビレート婚」という自己犠牲の美徳

ルツ記4章に出てくる、失った土地とやもめルツのセット売りは「レビレート婚」と言われるユダヤの慣習で、神によってモーセを通して言い渡された規定です。これを予備知識として知っておけば、ルツ記4章の買い戻しのくだりも理解しやすくなりますので、下記の記事ご参照ください。

牧師の書斎 - 「ルツ記」の黙想4

サザエのおすそわけ - ルツ記

「ヨベル」の50年目の約束

古代ユダヤの土地売買は所有権の売買ではなく、使用権の売買でした。所有権と思ってしまうと頭が混乱しますので、まずは下記のリンクで予習してください。

聖書入門.com - ヨベルの年

解説

ちょっと苦しいヨベル経過説

Coffman’s Commentaries on the Bibleによれば、エリメレク家がユダヤの地を離れてからその買い戻しの会話が持たれた間の期間中にヨベルの年が訪れ、土地の使用権がエリメレク家に戻っていた推定しているが、これは根拠不十分であり、そうでない可能性もあるので苦しい。まずその可能性を排除します。

ナオミは「未来遺産」を売っていた

仮にヨベルがまだ先にあって、第三者がその土地の使用権を保有しているとしても、やはりナオミは「売る」ことができるのです。言葉遊びのようですが、ナオミは現使用者からその使用権を買い戻す親戚に「売る」ことを仲介していたので、ナオミは「売る」ことの推進役だったからです。別の面で論理的に言うなら、ルツが生きている間にヨベルが訪れれば、土地はエリメレク家に、つまりやもめのルツの管理の元に戻ります。さらにその前に、親戚のだれかがルツと結婚すると共に土地を買い戻すことができるます。いずれにしても、ナオミは「未来の土地の使用権」を売っていたと言えます。かっこよくいえば「未来遺産」を売っていました。

権利者は実はルツだった

Whedon’s Commentary on the Bibleによれば、相続の順位は:息子→娘→兄弟→父の兄弟→最も近い親戚(民数記27:1-11 口語訳)。血縁関係のないやもめが相続していい記載はない、つまり相続できません。ルツはやもめで相続者になり得ないので、どうして土地を処分できるのか?

実は、相続の順位について定められているが、相続のタイミングは定められていません。なのでユダヤ人の慣習的に、やもめ(ルツ)が生きている間は、前記の相続者たちは土地を相続してはいけないことになっていたのです。もし相続が行われていたら、やもめはホームレスになってしまうので、かわいそすぎます。ですから、ナオミとルツはエリメレク家の土地が現所有者から親戚に売られることを要求する権利があったのです。もちろんそれに答えるのも親戚の自由です。

ルツが後出しされた理由

しかし、ボアズは「ナオミ」が土地を売りたいと言いました。George Haydock’s Catholic Commentaryによれば、ナオミがルツの代わりに権利を主張していたのです。John Trapp Complete Commentaryにルツの話を後から出す理由が書かれているが、あまり納得できませんでした(英語がうまく理解できていないからかもしれませんが…)。

John Trappの解説を踏まえてこういう風に言えるのではないかと筆者のジョシュアが考えました:

これはボアズの知恵ある慎重な交渉によるものでした。土地の話を先に出すことで、親戚の男がまず承諾し、次にルツとの結婚がセットであると告げることで、問題を分割してうまく処理したのです。その親戚の男が買い戻したくない理由が明らかにされたからです。明確に拒絶されることによって、ボアズは一点の曇りもなく、公明正大に土地を買い戻し、ルツを娶ることができました。

後記

かなり難解な部分で、英文の古典コメンタリーの見解も統一しているわけではありません。上記の回答はそれらを踏まえて発展させたものであり、もしかしたら間違っているかもしれません。英語が堪能な方は是非、文中で示されたコメンタリーを開いてみてください。ここで言及されなかったコメンタリーも読めますので、コメンタリーサーフィンしてみてください。先に言っておきますが、サーフィン自体は楽しくはないです(苦笑)。

新しい発見があれば、コメントにてご教示ください。聖書部の部員の方はオープンチャットの中でご教示ください。よろしくお願いします。

以上。